最近の薄型ラップトップにはシリアル/パラレルポートも PS/2 も、 さらにはフロッピィディスクドライブ (FDD) すらも付いていないものがある。 いわゆるレガシーフリーのマシンだが、これは各種 UNIX をラップトップで 使おうとする人間にとって鬼門である。特に FDD が USB 規格の外付になっている場合、苦労することになる。
この稿で扱う DynaBook SS 3430 も、そういった薄型ラップトップ (B5 サイズサブノート) の範疇に入る。当然、UNIX をインストールするのに 苦労することが予想された (このマシンの諸元)。 この予想は不幸にも的中した。
まず、Windows の全領域を消去し、Solaris と FreeBSD をインストールする 計画を立てた。9.5GB のディスクを半分に分割して、 それぞれをインストールするのである。
次に、ディスクの後半分に FreeBSD 4.2-RELEASE をインストール。 これは案外楽に行うことができた。BIOS で外付 USB FDD のレガシーエミュレーションを ON にしておけば、kern.flp、mfsroot.flp の2枚を使ったインストーラのブートも、問題なく実行できる。
問題は Solaris の方である。こちらはレガシーエミュレーションを有効にして、 インストールメディアに付属する Driver Configuration Assistant (DCA) フロッピィで起動しても、Solaris Secondary Boot の白い画面から 一歩も先へ進まない。 おそらく、この時点で OS が起動したのと同等の状態になり、 レガシーエミュレーションが効かなくなったものと思われる。
ここで引き下がるのも悔しいので、なんとか DCA ブートが行えないかと 考えてみたが、うまい方法が思いつかない。 もっとも解りやすい (そして野蛮な) 方法として、筐体を開腹→ディスク取出し →デスクトップ PC につないで OS インストールという手順があるのだが、 このマシンのディスクは狭い筐体の中でフィルムのような配線に囲まれており、 とても素人が外せるようなものではなかった。
残された方法が1つある。とにかく DCA が起動出来さえすれば良いのだから、 その DCA がディスク上のものであってもかまわない。それならば、 すでに Solaris/IA が動作しているマシンのパーティションをまるごと コピーして、ディスクに書き込んでしまえば良いではないか。
そこで、既に稼働していた ThinkPad A20m の Solaris パーティションを 丸ごとコピーしてくることにした。A20m には FreeBSD も入っているので、 そちらを起動した上で、Solaris パーティションを dd でベタコピーする。 このパーティションのサイズは 5GB に達するので、PCMCIA SCSI カードで 外付 SCSI ディスクを増設した後、そこにイメージファイルを保存した。
(SCSI カードを挿入)
# camcontrol rescan
# mount /dev/da0s1e /mnt ← da0 は増設した SCSI ディスク
# dd if=/dev/rad0s2 of=/mnt/solaris.img bs=128k
↑ad0s2 が Solaris パーティション
# umount /mnt
(SCSI カードを抜く)
次に、DynaBook を FreeBSD で起動し、この SCSI カード+ディスクを 接続してマウントする。 あとは、dd でパーティションイメージを書き込むだけである。
(SCSI カードを挿入)
# camcontrol rescan
# mount /dev/da0s1e /mnt
# dd if=/mnt/solaris.img of=/dev/rad0s1 bs=128k
こちらでは ad0s1 が Solaris パーティション ↑
# umount /mnt
(SCSI カードを抜く)
当然、A20m の ad0s2 と SS 3430 の ad0s1 を較べた場合、同サイズか 後者の方が大きくなければならない。
この状態で SS 3430 をブートすれば、Solaris パーティションの DCA が起動してくる。もし Solaris パーティションが起動可能でない場合は、 FreeBSD の /stand/sysinstall を使ってパーティション ID を直し、 アクティブフラグを付けておく。/stand/sysinstall を起動したら Configure → fdisk と選択し、t キーでパーティション ID をセット (Solaris 用のパーティション ID は10進で130)、s キーでアクティブフラグを セットできる。
DCA が起動できるのならばこっちのものである。 DCA の最後にあらわれるブートメディア選択でネットワークを選択し、 Solaris をインストールすれば良い。 ただし、この時点ではネットワークインストールの元となる インストールサーバの準備が出来ていない。はやる心を抑え、 まずはそちらの用意を整えることとする。
ここでは先程パーティションのコピーに使った ThinkPad A20m をインストールサーバに仕立てることとする。
A20m の CD-ROM ドライブに Solaris 8/IA のインストールメディア (Software CD 1 of 2) を挿入し、その中の Tools ディレクトリに移動して setup_install_server を実行する。
# mkdir -p /export/install
(Software CD 1 of 2 を挿入)
# cd /cdrom/cdrom0/Solaris_8/Tools
# ./setup_install_server /export/install
# cd; eject
ここで /export/install は、インストール配布物をコピーしておくための 作業ディレクトリである。以下、Software CD 2 of 2、Language CD Asian を挿入して add_install_server の実行を繰り返す。
(Software CD 2 of 2 を挿入)
# cd /cdrom/cdrom0/Solaris_8/Tools
# ./add_to_install_server /export/install
# cd; eject
(Language CD を挿入)
# cd /cdrom/cdrom0/Tools
# ./add_to_install_server /export/install
# cd; eject
インストールサーバの /etc/hosts ファイルには、インストール先ホストの IP アドレスとホスト名を記述しておく。
/etc/hosts:
192.168.0.15 mew
最後に、作業ディレクトリに移動してインストール先ホストの MAC アドレス、 ホスト名、カーネルアーキテクチャを登録する。
# cd /export/install/Solaris8/Tools
# ./add_install_client -e ff:ee:dd:cc:bb:aa mew i86pc
SS 3430 の電源を入れて起動する。
コピー元マシンで autoboot を有効にしているなら、 Device Configuration Asisstant 前の5秒の待ち画面で Esc を押すこと。 ここで見逃すと OS の起動に入ってしまうが、 別のハードウェア上で動いていたシステムは、まず動かないと思われる。
DCA で日本語キーボードの設定を行った後、最後のブートメディア選択で "NET" を選択する。このあとは通常の CUI インストールとほぼ同じである。メディア2枚目、 3枚目の入れ替えが要求されない分、CD-ROM インストールより楽なくらいである。
途中、アップデートインストールか、新規インストールかを選ぶ画面があるが、 新規インストールで綺麗に入れ直すことにする。
この DynaBook SS 3430 はグラフィックチップに S3 Savage IX を採用しており、Solaris 8 標準の Xsun では動かないので、X を使いたいなら XFree86 または Porting Kit のインストールが必須となる。システムのインストールの時点では、X の設定をすべてスキップしておけば良い。このことは ThinkPad A20m の項でも触れたので、 そちらを参照のこと。
OS のインストールが終わったら、XFree86 または Porting Kit をインストールする。 XFree86 4.1.0 で利用できる XF86Config も一応置いておく。
東芝製のノート PC では、BIOS 設定に PC カードコントローラを 16bit モードで動かすための項目があることが多い。具体的には、 SS3430 の場合、BIOS setup 2ページ目の PC CARD → Controller Mode を "PCIC Compatible" にすればよい。
ただし、この設定を行うと Windows の動作が不安定になるという噂も聞くので、 Windows とのデュアルブートにしている人は要注意である。
私の手元の SS3430 では、3Com 3C589 イーサネットアダプタと、 IBM Microdrive が動作しており、特に動作に支障は無いようだ。
サブノートの小さい画面で Solaris が動いているのを見るのは、 ある意味快感である。つい人に見せびらかしてしまう。
しかし、ハードウェア的な限界も多い。フロッピィや CD-ROM が当然使えないし (イメージファイルとして持ってきて lofi でマウントするという手はある)、 メモリ 128MB というのも少ない。どうも 128MB と 192MB の間に 「CDE を日常的に使う場合の閾値」があるらしく、192MB の ThinkPad A20m はそれなりに快適だが、128MB の DynaBook はスワップが起こる場合が多い。 ラップトップPCで Solaris を使いたい場合、192MB 以上のメモリを搭載することを推奨する。
もしくは、mozilla や XEmacs などの「怪物」を使わないことだ。